安納芋は、もともと種子島の安納地区で作られていたさつまいもです。
ねっとり甘~い安納芋をはじめて食べたときは、その甘さとおいしさにびっくりしました。
他にはない、強烈な味でした。その瞬間から、安納芋が大好きになりました。
普通のさつまいもよりもちょっと高いけれど、同じお金を出すなら、ちょっと高くても間違いなくおいしいものを選びます。特にふところが寂しい昨今はなおさらです。
種子島についてすぐに、安納芋を出荷している「JA種子屋久(たねやく)」さんを訪問し、いろいろとお話を伺いました。するとなんと、安納芋を取り巻く大きな問題を聞くことが出来ました。
「安納芋買ったけれど、ぜんぜんおいしくなかった」
「去年のはおいしかったのに、今年のはだめね」
「くず芋ばっかり入っていた」
こんなクレームがJAへ寄せられているそうです。
しかし、クレームのほとんどは、なんとJAでは出荷していない商品でした。
「安納芋」は、この地で昔から作られていた芋ですが、自分のところで種芋を採取(自家採取)すると品質にばらつきが出やすい特性がありました。どんどん小さくなったり、味がなくなったり。
だから、前年の芋でもっとも出来のいい芋を品評会で選抜し、その芋から取ったいい苗を県の育苗施設で育て、「JA種子屋久」へ出荷。農協でその苗からまた苗を増やし、部会の生産者へ配るのです。
こんな苦労があって、安納芋の品質は守られているのです。
ちなみに誤解されていますが、この選抜は「品種改良」ではありません。
「優良芋(苗)の選抜」ということです。昔からの品種に手を加えているわけではありません。
よくいろいろな広告を見ると「私たちの芋は品種改良されていない昔からの在来種の芋」と書かれていることがありますが、それは種芋を自家選抜しているということを強調するあまり、間違って表現してしまったもの。
最近は、自家採取の芋で栽培している芋もたくさん出回り、一部味にばらつきのあるものが出回っているそうです。そのクレームがJAへ来る。とばっちりです。なんと鹿児島本土で作っているものもあります。種子島の立地、環境、古代から浸み込んでいる海のミネラルを多く含んだ土壌から出来るから、あんなにおいしく出来るのに、本土で作ってはもとから違います。
本土で出来たものは、色、形は安納芋でも、味や糖度は明らかに違うそうです。
箱に、「島あんのう」と書いてある芋が、 品質にばらつきをなくすために苗からきちんと作られた安納芋。それ以外は「在来種」(種芋を自家選抜したもの)です。
以前山形鶴岡のだだちゃ豆で聞いた話がオーバーラップしました。
確かな品質を維持する苦労と、さまざまな障壁。
確かに自家選抜のものでも、おいしいものもたくさんあります。でも「常に安定した品質と量」があって、次代につながるのだと思います。
確かなものが何なのか、しっかり知らなければいけません。