昭和24年から続く仙台の老舗のおでん屋「三吉」で、ほんの身内で忘年会をしました。
ここのおでんはどれも最高においしく、味噌とたまご、片栗粉を加えたさんまのすりみは絶品です。そして何より、上品で柔らかいのに味がしっかりしていて、でも限りなく優しい三吉のだし汁は、それだけでもう大満足です。
ハタハタ焼もおいしかった。
でも、ここの隠れた名品が、きりたんぽ鍋。
先代のおやじさんが秋田出身だからでしょう、食通の男・中澤さんも「ここのきりたんぽ鍋は秋田の味そのものだべさ」と唸る一品です。
特においしいのが、せりの根っこ。ズリ、ズリというなんとも言えない歯ごたえ、食感がたまりません。
宮城県は、実はせりの出荷量が日本で2番目。面積は3番目と、けっこうな産地なのです。
でも、秋田のそれとは茎の太さ、長さが全然違います。聞けば、一番違うのは、初めから根っこを重視して作られていることだそうです。宮城のせりは、ひょろっと茎を長く伸ばして育てられますが、秋田のは茎は短く、太い。そして根っこがすごい存在感。秋田のせり生産者は、あえて根っこが太く美味しくなる品種を植えているのだそう。今日のきりたんぽのせりももちろん秋田産のせり。
おなじ「せり」でも、地域によって全然違うのですね。
昔から伝わるその土地土地の食文化は、おいしいものを作ろう、と意気込んで作られたというよりは、「一時に集中して出荷される作物を飽きずに捨てずに消化するには」だとか、「豪雪地帯の命を託した保存食」などのように、「くらしの必然」から生まれるんだよ。
東北はまだまだおいしいものがある。食の宝庫だ。もっと知りたいね。
そんな話に花が咲きました。
あと3つ寝るとお正月。
いろんなことがあり、みんなそれぞれ多くの傷を負いながら、雲間になんとか陽光を探していた2010年ももうすぐ終わりです。
鍋の中でほぐれかけたきりたんぽと、静かにおいしいせりの根っこ。
とてもあたたかく、おいしい夜でした。